オミクス博士のブログ

薬学の博士課程のブログ

肥満は味覚を変える?


 肥満は、私たちの舌の食べ物への反応を変えることで、私たちの味覚を変えるかもしれないことが明らかとなりました。ScienceDailyで伝えられています。

2013年11月13日、PLOS ONEにおいてBuffalo大学の生物学者が、肥満がマウスの甘味を感知する能力を弱めることを報告した。
やせたマウスに比べると太ったマウスでは甘味に反応する舌の味細胞が減少しており、味細胞の甘味への反応も弱まっていた。


 これまでの研究では、味覚に関して肥満が脳と末梢の味覚系を支配する神経に及ぼす変化を研究するものが多く、食べ物がじかに接する舌の細胞の研究はあまり行われてきませんでした。

今回の研究では、味覚経路の最初の段階に関わる舌の味覚受容細胞それ自身が肥満に影響を受けることが示されました。

 いちど太るとなかなか痩せられなくなるのは、肥満によって味覚が鈍ることで、味の濃い高カロリーな食べ物を好むようになったり、食事での満足感が得にくくなることで、ついつい食べ過ぎてしまうからなのかもしれません。

 私たちの身体を肥満のない健康的な体型に維持するためにも、味覚と食欲、肥満の関係について、さらに研究を進め、より深く理解することが重要になります。

今回の研究がさらに発展すれば、肥満の人の味への反応が鈍った舌の味細胞を正常な状態に戻すことができるようになるかもしれません。

そして、それによって今までよりももっと簡単に痩せられるようになるかもしれません。

舌は身体の外に出ているので、舌の細胞を治療することは脳などの細胞を治療することに比べたら簡単です。

肥満を治療する上で、舌の細胞というのはとても魅力的なターゲットなのではないかと思います。

 今回の記事の元になった論文はこちらです。

 

  • Amanda B. Maliphol, Deborah J. Garth, Kathryn F. Medler.Diet-Induced Obesity Reduces the Responsiveness of the Peripheral Taste Receptor Cells. PLoS ONE, 2013; 8 (11): e79403 DOI: 10.1371/journal.pone.0079403

 


オープンアクセスなので無料で読めます。もし興味がありましたらぜひ読んでみてください。

photo by Jon Rawlinson