オミクス博士のブログ

薬学の博士課程のブログ

グリオブラストーマ研究のための有用な細胞バンクの誕生

 Cell PressとLancetが共同で出版しているオープンアクセス誌EBioMedicineからグリオブラストーマ研究のための有用な細胞バンク(HGCC biobank)が発表されましたXie, Yuan, et al. "The human glioblastoma cell culture resource: validated cell models representing all molecular subtypes." EBioMedicine 2.10 (2015): 1351-1363.

Uppsala大学プレスリリースへのリンク
http://igp.uu.se/research_news?tarContentId=452388

 グリオブラストーマGBM)は成人の原発性悪性脳腫瘍で最も頻度が高く、予後も悪い(1年生存率36.5%)非常に致命的な疾患です。

 GBMの研究(新しい薬や治療法の開発など)のために容易に利用可能なGBMのモデル細胞株は無くてはならない存在です。


これまでにU87やU251、T98GといったGBM細胞株がよくGBMの研究に利用され、有用な知見が得られてきました。



しかし、従来のGBM細胞株はいくつかの理由で臨床のGBMを完全には反映していないと言えます。

例えば、従来の培養条件では幹細胞様がん細胞が消失してしまいます。

GBM幹細胞は再発や治療抵抗性の要因であるという根拠がこれまでに数多く報告されているため、がん幹細胞様の性質が消失してしまうのは重要な課題です。

HGCC biobankのGBM細胞株はがん幹細胞様の性質を保持していることが示されています。

また、GBMにはいくつかのサブタイプがあり、最も一般的なものとしてThe Cancer Genome Atlas Research Network (TCGA)によって分類された4つのサブタイプがあります(Proneural型、Classical型、Mesenchymal型、Neural型)。

HGCC biobankで確立および特性評価された48のGBM細胞株には4つのサブタイプ全てが含まれます。

HGCC biobankのGBM細胞株に関する全ての情報(例えば、遺伝子変異、サブタイプ、患者さんの臨床データ)がオンラインで得ることができます。

MediaPad T2 7.0 Proを買いました。

 

 2年くらい使っていたスマホが充電できなくなってしまったので新しいのを買うことにしました。

僕はスマホガラケーの2台持ちでスマホで電話はほとんどしないので、新しいのは画面の見やすさを重視してタブレットにすることにしました。

タブレットの大きさは持ち運びのしやすい7インチで探して、値段が安くて(価格.comの最安値(2016/9/22)で23,512円)その割に性能が良いMediaPad T2 7.0 Proを買うことにしました。


前のスマホではポケモンGOが対応していなかったのですが、MediaPad T2 7.0 Proは対応していたのでポケモンGOも始めました。


ちなみに現在の電話・ネット料金は電話料金がdocomoガラケーの料金プランで月1,500円くらいで、ネット料金がWiMAX2+(月間データ量制限なし)で自宅と外出先のネットを兼ねていて月3,609円です。

ただWiMAX2+だと外出先でネットが繋がらない場所がたまにあるので、自宅のネット環境は光回線にして外出先のネット環境はデータ通信専用の格安SIMにした方が、値段がそんなに変わらなくて外出先でのネットが繋がりやすくなって良い気がしています。

 

東北大の授業料の半額免除を受けることができました。

 昨年度(博士課程1年)は授業料免除申請が通るほど自分が貧乏だと気付いていなかったので申請を忘れてしまい残念でしたが、今年度(博士課程2年)は東北大の前期の授業料を半額免除していただけることになりました。


僕の経済状況としては、東北大のティーチング・アシスタントとリサーチ・アシスタントからの年間45万円ほどの収入と、日本学生支援機構からの年間146万4千円の無利子(一種)の貸与奨学金で生活しています。両親からの金銭的援助はありません。

ただ申請の際に両親の収入に関する書類の提出も求められたので申請結果には両親の収入も加味されていると思います。

 自分では授業料免除申請が通ると思わなくても申請してみたら意外と通ることもあるので、大学生や大学院生でまだ授業料免除申請をしたことが無い方は各自の大学で申請をしてみてはいかがでしょうか?

申請手続きは少し面倒ですが、採用されれば数十万円お得になるので申請する価値は十分にあると思います。

 

プロテオミクスに有用な細胞内局在データベースMetazSecKBの紹介

 タンパク質の機能を知るためにそのタンパク質が細胞のどこにあるのかいうのは重要な情報です。

 
現在、インターネットで無料で公開されていて情報が随時更新されている細胞内局在データベースには、MetazSecKBLOCATEがあります。

MetazSecKBはヒトを含む121種の動物に対応しており、LOCATEはヒトとマウスに対応しています。

MetazSecKBでは、UniProtKB/Swiss-Protから得た実験に基づく根拠と7つのin silico細胞内局在予測ソフトから得た結果をまとめてタンパク質の細胞内局在を決めています(下図)。



網羅的プロテオミクスを行うと数百から数千種類のタンパク質が同定されますが、1つ1つのタンパク質の細胞内局在を手動で確かめるのは大変です。MetazSecKBとLOCATEどちらのデータベースもデータベース内の全てのデータを無料でダウンロードできるので、ダウンロードしたデータを用いることで網羅的プロテオミクスで同定されたタンパク質と細胞内局在データベースの情報を自動で結び付けるプログラムを作成できます。

プログラムを作成するのにMetazSecKBのデータのまとめ方の方が扱いやすかったので、僕はMetazSecKBのデータを用いてExcel Macroでプログラムを作成しました。



研究キャリアを考える上での参考になれば幸いです。<感想>市民のためのサイエンス講座「記憶のしくみと心のなりたち」

 


 先日は東北大学の萩ホールで開催された市民のためのサイエンス講座「記憶のしくみと心のなりたち」に参加してきました。神経科学のお話も大変おもしろかったですが、プロの研究者の一般の方々への研究発表のやり方という視点で見てもためになりました。利根川進先生の研究キャリアについてのお話もとても参考になりました。

自分としては研究キャリアについてのお話が今後の自分の人生を考える上で非常にためになったので、研究キャリアについての内容に重点を置いて今回の講演の内容・感想を記事にしてまとめておこうと思いました。この記事は講演中に取ったメモに基づいていますので、事実と異なる内容も含まれるかもしれません。

「うれしい出来事はなぜ忘れないのか」

東北大学包括的脳科学研究・教育推進センター長 飯島敏夫 教授

 最初は飯島先生の講演で、海馬は新規記憶の形成に関わり、扁桃体は恐怖の発生に関わるというような内容でした。

最初の講演なので難しいお話や最先端のお話は無く、後の講演の理解を深める導入的な講演になるよう基本的な内容をとても丁寧に分かりやすく説明していました。

「海馬は一生神経細胞を作り続ける」

東北大学大学院医学系研究科 創生応用医学研究センター長 大隅典子 教授


 一方で次の大隅先生の講演は最先端で一般の方々には少し難しいんじゃないかと思える内容を「インサイド・ヘッド」という映画の内容と絡めて一般の方々に親しみやすくなるように工夫して説明していました。

大隅先生の講演の内容は、次のようなものでした。

大人の脳ではどこでも新しい神経細胞が生まれているわけではなく、新しい神経細胞の産生は主に海馬に限定されている。

運動や睡眠、栄養の摂取で記憶の定着が促される。大隅先生は栄養の摂取による記憶の定着を研究されていてアラキドン酸(ARA)が新しい神経細胞の産生、ドコサヘキサエン酸(DHA)が産生された神経細胞の定着に関わっているとおっしゃっていました。


「辛い記憶とどう向き合うか」

東北大学災害科学国際研究所 災害精神医学分野 富田博秋 教授

 富田先生の講演はこれまでの基礎研究的な内容とは対照的で神経科学を応用して震災体験などの辛い経験で傷ついた心をどのように癒すかというような内容で、神経科学が自分たちの生活にどう役立っているのかを理解することができました。

「記憶のしくみと心のなりたち ノーベル賞受賞後のチャレンジ」

マサチューセッツ工科大学 利根川進 教授

 利根川先生の講演は前半が研究人生についてのお話で後半が神経科学を中心とした利根川先生の研究内容についてのお話でした。

研究人生のお話では、利根川先生の現在の成功へと至る研究人生の岐路において人とのつながりが大きな役割を果たしていたということがとても印象的でした。もちろん利根川先生の現在の成功は利根川先生ご自身の尋常ではない努力があってこそなのですが。

利根川先生の研究分野は、化学→分子生物学→免疫学→神経科学と移って行きました。

利根川先生は京都大学で化学系の研究室に入り、そこで研究室の先輩から当時の日本では全く研究されていなかった分子生物学という分野がアメリカで研究され始め発展しているという話を聞き分子生物学への興味を持ちました。

その後、分子生物学を学ぶために京都大学の恩師の紹介によりアメリカの大学院への留学が決まり、そこでPh.D.を取得されました。

利根川先生はPh.D.取得後も分子生物学の聖地であるアメリカで研究することを希望していましたが、Ph.D.取得後2年でビザが切れるためアメリカには長く滞在することができないという問題がありました。

そんな時に利根川先生は、免疫学の専門家ではないが非常に先見の明があると尊敬していたRenato Dulbecco博士から「分子生物学の手法を免疫学に応用することできっと面白いことがわかるはずだ」とアドバイスを受け、スイスのバーゼル免疫学研究所に研究の拠点を移すことを決意します。これが後のノーベル生理学・医学賞の受賞につながります。

スイスでは10年間、研究を行いましたが、分子生物学の聖地であるアメリカへ戻りたいという気持ちもあり、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授職へのオファーを受け、研究の拠点を再度アメリカへ移しました。

MITでもしばらくは免疫学の研究を続けていましたが、今後の科学において脳は非常に魅力的な研究分野であるという考えから徐々に研究の重点を免疫学から神経科学へと移していき現在に至っているということでした。


高校生と大学生が利根川進教授を囲むディスカッション

 利根川先生との質疑応答のコーナーでは、「例えば、自転車に乗れない人に自転車に乗った記憶を与えるとその人は自転車に乗れるようになるのでしょうか?」といった神経科学に関する興味深い質問もありましたが、僕が最も興味を持ったのは研究キャリアに関する質疑応答でした。

以下で、2つの研究キャリアに関する質疑応答を紹介したいと思います。

Q1. 研究キャリアを積み重ねる上で大切なことは何ですか?

利根川先生の回答

  • これから何が重要になるのかを考え、自分のモチベーションが上がり、情熱を持てる研究分野を見つけなさい。これから何が重要になるのかは自分だけで考えるのではなく、友人や先生などと議論することも大切である。
  • 優れた人の考え方およびそれに基づく行動を真似なさい。
  • 留学をするなら、なるべく脳に柔軟性のある20代の内に行った方が良い。
  • 最終的には運も重要な要素となるが、自分の行動で影響を及ぼせることには一生懸命に取り組みなさい。
 
Q2. 量産されているPh.D.取得者に対して、大学や公的研究機関のポストが足りていない現状に対してどう考えますか?
 
利根川先生の回答
  • 個人的なレベルでは良い研究をすれば必ず職は見つかると考えるしかないと思う。
  • 研究者は芸術家などと同じように研究が好きだというのが根底にあって、自分が重要だと考えることに一生懸命に取り組んでそれで職が見つからないんだったらしょうがないという覚悟が必要。
  • 本当に研究に一生懸命に取り組んだんだとしたら研究以外のことでも生きていけるだけの能力は身に付いているはず。
 

<紹介>市民のためのサイエンス講座「記憶のしくみと心のなりたち」

 
 東北大のイベントで面白そうなものを見つけたので紹介します。
市民のためのサイエンス講座「記憶のしくみと心のなりたち」ノーベル賞受賞利根川進氏特別講演(9/27開催)https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2015/09/event20150828-01.html


入場無料で参加の申し込みは9/6(日)が締め切りです。定員があるので興味のある方はお早めにどうぞ。

 神経科学のお話だけでなく、利根川進先生が免疫学から神経科学へと研究分野を大きく転換した経緯などの研究者人生についてのお話もあり、とても興味深い講演だと思います。

やる気が出ないときは、少しの時間だけ作業すると決めて取り掛かる

どうしてもMPが減って、とりかかれない場合には、5分だけメールを書く、5分だけ作業をするといったように、時間でタスクを分解するということができます。これを「小さなタスクに分けよう」というのはなかなかうまくいきません。時間が足りないのではなく、MPが不足して何もできないとき | Lifehacking.jp

 やる気が出なくてなかなか作業に取り掛かれないんですけど、やる気を振り絞って作業に取り掛かってみると中途半端が気持ち悪くて意外と区切りの良いところまで長時間作業できてしまうことが僕にはあります。

Lifehacking.jpで堀 E. 正岳さんが紹介している少しの時間だけ作業すると決めて取り掛かるという方法は、やる気が出ない場合に作業に取り掛かるためのきっかけを作るのに有効だと思いました。

 緊急ではないけど重要なこと、スティーブン・R. コヴィー著の「7つの習慣」でいうところの第二領域のリストを作成して毎日、最低でもどれか1つに5分間だけ取り組んでみるのも良いかもしれません。

第二領域のことはついつい後回しにして滞ってしまいがちですが、意識して毎日5分間だけでも取り組めば少しは進捗しますし、作業に取り組み始めさえすれば区切りの良いところまで終わらせるためにもう少しだけ長く作業しようという気持ちになって意外に大きな進捗が得られるかもしれません。

完訳 7つの習慣 人格主義の回復
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